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秋元征紘のコラム

ジャイロ経営の薦め ~社員のパッションをマネージする~
1. なぜ「ジャイロ経営」が必要なのか


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私は、1970年にNSKに入社、ニューヨーク、トロント駐在のあと、1980年日本KFCに転職、1987年日本ペプシ・コーラに副社長として出向、1993年からナイキ・ジャパン、そして1995年からはLVMHグループのゲランの日本法人の社長を勤め、2006年に会長職を退きました。実は、その間の日本企業の海外現地法人、日米合弁会社、米国あるいは欧州企業の日本法人のトップマネージメントの経験と並行して、大学時代からの関心事であった、「日本の経営」「戦略的経営」「目標・戦略への社員のパッショネートなコミットメント」の問題を体系的に追いかけてきました。このような、私の事業人生の成果の集大成といえるものが「ジャイロ経営」なのです。


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地球規模で激変する経営環境

今日の企業を取り巻く環境は激しく変化しています。
例えば、下記の様な具合です。

 ・ BRICS諸経済の台頭と中国、インドをはじめアジア国籍企業の
   目まぐるしい活躍により、多元化した世界経済
 ・ 元気の良いユーロ経済・欧州企業と、世界経済に於ける
   ドル支配の体制の終焉
 ・ 現実的な課題となった地球温暖化と関連した環境問題と資源問題
 ・ バイオエタノールによるエネルギー代替に端を発して高騰する食料価格
 ・ スピードアップした世界的な「創造的破壊過程」と
   国家・企業間の「イノベーション力」競争の時代の到来


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日本経済と企業経営

一方、国内の経済問題に目を転じると、下記のような様々な問題が、連日報道されています。

 ・ 地球的規模での経済環境の変化と日本の組織的適応力の低下、
   つまりかつて「21世紀は日本の世紀」と言わしめた「日本株式会社」
   システムの失墜と、その重要な担い手であった猛烈社員とエリート官僚
   組織の社会的な地盤沈下
 ・ 問われる世界に於ける日本のリーダーシップ
 ・ 2大政党システムの機能不全の下で、静かに進行する株安・円高
 ・ 国内の否定的で内向な議論と、重大な問題へのパッチワーク的対処
 ・ 頻発する企業倫理関連スキャンダルや公共的組織・地方自治体の
   経済的な破綻
 ・ 環境問題とも関連した、エネルギー・原材料関連資源の需給関係の
   変化によって拡大された原材料関連のコスト高

このような問題の対処として、いわゆる「失われた10年」から現在に至るまで、リストラといった改革努力と並行してコーポレートガバナンスの問題は大きく取り上げられ、その結果多くの企業においては組織の変更を伴った改革が実現されました。そしてこの過程で、日本的経営とガバナンスの問題が様々な形で再び議論されました。

「ジャイロ経営」では、このようなリストラや組織形態の改革あるいは日本的な適応の重要性を否定するつもりは一切ありませんが、「イノベーション力」や「絞り込まれた戦略」に代表される問題解決力と並行して、企業の掲げるビジョン・ミッションとそれらに基づいた目標・戦略の内容とその伝達(コミュニケーション)が的確に行われ、構成員や社員のコミットメントを獲得し続づけているか否かの問題こそが、現代の企業にとっての死活問題となるといっても過言ではないと考えています。


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戦略的経営計画とイノベーション力

前述のような厳しい現在の経営環境の中で企業が生き残る為には、精度の高い、絞り込まれた、強力な経営戦略が必要です。

その基本はビジョン・価値・「志」(ミッション)の明快さ、その事業を取り巻く内外の要因の正確な把握力と分析力にあります。そして更に、戦略と行動計画の有効性は、シュンペーターが定義した、それら要素の「新結合」(イノベーション)によってもたらされる「創造的破壊」を生み出す能力、つまり「イノベーション力」に掛かっています。

地球規模での企業間の競争は、この様なイノベーション力の競争であり、マネージメントと社員に期待されているのは創造的破壊をもたらすような「創造性」です。

経済社会のグローバリゼーションの問題が取りざたされるようになってから久しく、現在までにその対処に関しても様々な議論がされてきました。このような地球規模で激変する経営環境の変化の中で、企業には、創造性を持ち、常に絞り込まれた、強力な戦略を迅速かつ積極的に推し進め、競争に勝ち残っていくことが要求されています。


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目標・戦略に対する社員の理解とパッショネートなコミットメント

勝敗を分けるのは多くの場合、内外の社会経済環境の的確な理解と、その戦略の精度にありますが、掲げられた目標・戦略に対する社員の理解とコミットメントが、しばしばより重要な役割を果たしています。すなわち、一般的に、成功は構成員に戦略を理解・浸透させ、圧倒的な支持が得られた時に到来すると考えられますが、その為には、社員の「組織の目的に従順に従うのではなく、その目的を論理的にも感情的にも受容し、積極的に参画しようとする」パッショネートなコミットメントが不可欠となるのです。

「ジャイロ経営」は、このような戦略と社員のコミットメントの問題への対応として、客観的で正確な組織力診断の手法「GCE調査」と、具体的な解決策を提供するようにデザインされています。


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プロセスの内生化を通したパッショネートなコミットメント

企業の戦略的経営による成功は、多くの企業が経験してきたように、外部の「戦略」専門家だよりの他力本願では不十分です。戦略構築の基本はむしろ社内にあり、そのプロセスの内生化が不可欠です。この過程を通して、組織の論理的な理性と熱意をもった感情という、二つのベクトルを、正しい方向性をもって、バランスよくマネージすることこそ、現代の企業家のリーダーシップの要件の中で最も大切なものであり、勝敗の鍵を握るものなのです。

「ジャイロ経営」では、その具体的な実現方法として、社内の選抜クロス・ファンクショナル・チームによる対策案の提案と、経営幹部(マネージメント)によるオフサイト戦略会議を推奨しています。


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ジャイロ経営の導入に当たって前提となる諸要素

さらに、「ジャイロ経営」を展開していく上では、明快なビジョン、リーダーシップ的経営、平坦で参画的な組織、戦略的な経営プロセス、明確な職務・業務責任の規定と適正な分担、正当な評価に基づく昇給・昇格、迅速かつ柔軟で選択肢をもった行動的意思決定といった項目を満足させる社風・企業文化を築いてゆく努力が、手法の導入と並行してなされることが、大変に重要になります。

これらは「ジャイロ経営」の屋台骨ともいうべき要素であり、これらの要素なくしては明快な戦略も社員のパッショネートなコミットメントも成立し得ないのです。


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生き残る経営手法としての「ジャイロ経営」

今日の多くの企業にとって、企業力の強化とは、いささか使い古された「リストラ」という言葉に代表される数量的な改善や、コーポレートガバナンスの議論に代表される組織形態の問題とは異なります。企業が明快な経営の目標・戦略を内生化し、その実行が自らの立てた計画の実現の喜びであると同時に、業績評価の大切な基準として捉えられ、目標・戦略の達成意欲が強化されることによる業績の向上のことなのです。そこにおいて重要なことは、積極的な社内コミュニケーションによって、社員の事業やブランドに対するパッションのレベルが常に積極的にマネージされていることです。

今回は、このような事態を実現する手段としての「ジャイロ経営」の定義、私が実際に体験した地球的な規模で成功を収めたKFC・ペプシコーラ・ナイキ・LVMHにおける企業家としての先達の優れたコンセプトとその具体的内容、「ジャイロ経営」の実践例とその理論的背景を、12回のシリーズに分けて具体的に提案していきます。


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  代表 秋元征紘が
  ジャイロ経営をご説明します。